サフランモドキ

 サフランモドキのモドキは、漢字で「擬き」と書き「似て非なるもの」の意味です。その名前の由来は次の通りです。サフランモドキは、江戸末期に日本へ渡来しましたが、当時の人は、薬用のサフランと思ってサフランと名付けたそうです。ところが明治に入って、本物のサフランが知れ渡るようになって誤りであることが分かり、サフランモドキという名前になったそうです。でもほんとうの名前はあったはずで、なぜそれに戻さなかったのでしょうか?桃色の美しい花なのに、自分の本当の名前で呼んで貰えず、サフランモドキとは如何にも気の毒です。

 サフランモドキの花。桃色の花弁、「おしべ」の黄色の葯、真っ白な「めしべ」が鮮やかです。
上向きに咲くことが多いのですが、この花は少しうつむきに咲いています。

 サフランモドキは、中央アメリカ原産のヒガンバナ科タマスダレ属の多年草で、秋の初め郊外の道端でしばしば見かける白い可憐な花、タマスダレ(玉すだれ)と同じ仲間です。ヒガンバナ科タマスダレ属の植物の総称を、学名ではゼフィランサスと言い、サフランモドキはゼフィランサス・カリナタとなります。これがサフランモドキの正式名称であり、せめてこの名に因んだ名前を付けてやれば、サフランモドキも喜んだことだろうと思います。

サフランモドキの花。「めしべ」の先端は3裂です。

 サフランモドキは、地下に鱗茎と呼ばれる球根のようなものがあり、そこから花茎が1本伸びて先端に径6cmほどの比較的大きな花を1個咲かせます。花は、外花被片(萼に相当)、内花被片(花弁に相当)それぞれ3枚ずつの6枚からなり、鮮やかな桃色をしています。 目立つのは「おしべ」と「めしべ」です。「おしべ」は6本で黄色の細長い葯を持ち、葯は花糸に対してT字型に接続して揺れます。真っ白な「めしべ」は一本で、柱頭は3裂ですが、4裂のものもあります。花は6月から7月頃に咲き、雨の降った後に開花することが多いので、英語ではレインリリー(Rain Lily)と呼ばれます。

背後から光を浴びると花の中央部が明るく輝き、「おしべ」が浮かび上がります。「めしべ」の先端は4裂です。
折り重なる葉の隙間に開き始めたサフランモドキのつぼみ 
上向きに咲くサフランモドキ。どの花も中央部が明るく輝いています。
 
サフランモドキの光と影