マツバウンラン(松葉海蘭)

 マツバウンラン、聴き慣れない名前かも知れません。ウンラン(海蘭)とはゴマノハグサ科ウンラン属の植物で、蘭ではないのですが、浜辺に咲く蘭のように美しい花ということで、この名が付きました。マツバウンランは、花はウンランに似て、葉が松の葉のように細く尖っているものですから、松葉海蘭となりました。アメリカ原産のオオバコ科マツバウンラン属の植物で、日本では1941年に京都で初めて確認されたそうです。津市郊外でも、数年前頃は野山で時々お目にかかる程度でしたが、最近は里山はもちろん街中の公園など、至る所で目にするようになりました。ひょろひょろと伸びた細い茎の先端に、数個の青い花が咲きますが、何とも不思議な形をしています。花弁(はなびら)が輪状に並ぶ普通の花の形にはほど遠く、子供の時遊んだおもちゃの飛行機か、UFOのようにも見えます。「おしべ」や「めしべ」はどこにあるのでしょうか?同じ仲間のオオマツバウンランも非常によく似た形をしています。そこでマツバウンランとオオマツバウンランの花を比較しながら並べました。

春風に吹かれ心地良さそうに揺れるマツバウンランの群
水辺に憩うオオマツバウンラン
マツバウンラン           松葉のような葉            オオマツバウンラン 
並んで咲いている花を撮影したものですが、マツバウンランに比べ、オオマツバウンランの花は2倍ほど大きいことが分かります。(左:マツバウンラン、右:オオマツバウンラン)
マツバウンランもオオマツバウンランの花も、上唇と下唇の2枚の花弁からなり、下唇の中央部は盛り上がっています。盛り上がった部分が、マツバウンランでは白いのですが、オオマツバウンランでは白くなく、花弁全体に紫色のストライプが目立ちます。どちらも上唇と下唇の接合部に距が開口します
距とは、オダマキやランなどでみられるもので、花弁の後方へ突出する角状の突起で、中に蜜などを溜めて虫を誘い寄せます。距の大きさを花弁と比較しますと、オオマツバウンランの距はマツバウンランに比べ非常に大きく目立ちます。上の写真では、マツバウンランの花が強拡大されていますので距は見えますが、実際の花を肉眼で見た場合、距は小さ過ぎて確認し難いほどです。距の中に長短2本ずつの「おしべ」と1本の「めしべ」が入っています。
スイバの赤い穂を背景に咲くオオマツバウンラン。
農道の斜面にぎっしり群れるマツバウンラン