新刊 朗読ワークショップ        

軽井沢朗読館館長 青木 裕子 著  アーツアンドクラフツ社

 青木裕子氏は元NHKアナウンサーで、「スタジオ102」や「ニュースワイド」などで活躍されました。現役の頃から朗読に魅了され、NHKを定年退職後、2010年に私費を投じて日本で初めてとなる軽井沢朗読館を開設されました。以後館長として活躍されるとともに、全国各地にて、朗読を通じた文化活動や支援活動などを積極的に展開されています。
 青木氏の仕事は数え切れないほどたくさんありますが、その幾つかを紹介致します。
 フランス人の冒険飛行士アンドレ・ジャピーは、1936年パリ-東京間100時間の懸賞飛行に飛び立ちますが、佐賀県の上空で墜落し地元の人達により救出されます。日仏間の人の交流が深まる先駆けとなったこの話は、その後長い間忘れられていましたが、青木氏はいろいろな資料や言い伝えなどを掘り起こし、「アンドレの翼」という日仏両国語から成る朗読劇に仕上げられました。公演は2013年に日仏両国で、翌年には津市も含めた日本の7都市で開催されました。日本語を青木氏、フランス語をフランス人女優が担当したのですが、聴衆は、物語の面白さに加えて日本語とフランス語の音の美しさに聞き入っていました。
 また、がん患者さんの精神的支援を行う朗読ワークショップも全国で展開され、2015年に津市でも開催していただきました。参加されたがん患者さんの感想です。「ワークショップでは、がん患者さんがグループになって朗読するのですが、続けているうち不思議な連帯感が生まれ、一人じゃないと思うようになりました」。確かに朗読は、患者さんたちを孤独から救う大きな力となるようです。
 三重県にゆかりの深い青木氏が新しく上梓された本書には、小説、詩、エッセイを朗読する際の大切なポイントや、その面白さ、魅力が分かりやすく解説されています。是非ご一読ください。        (竹田 寛 記)