夏水仙(ナツズイセン)は、葉が水仙に似ているからこの名が付きました。水仙とは似ても似つかない華麗な花は無視されて、不本意にネーミングされた気の毒な花です。夏水仙は、ヒガンバナ科ヒガンバナ属の多年草(水仙も同じヒガンバナ科ですがスイセン属です)、お盆前後より50~60cmほどの真っ直ぐな花茎を伸ばし、先端に桃色の美しい花を4個ほど咲かせます。ヒガンバナの仲間ですから、花と葉は別々に現れます。彼岸花では花が枯れた後に葉が出て冬を越しますが、夏水仙では、春に葉が出て枯れた後に花が咲きます。
江戸から明治時代に渡来した外来植物かと思っていましたが、はるか古くに中国から伝わった帰化植物で、そのため幾つかの地方名(八戸市のカラスノカミソリや神奈川県のピーピーグサなど)があります。ヒガンバナ科ヒガンバナ属の植物を総称してリコリスと言い、彼岸花、夏水仙、狐のカミソリのほかいろいろな園芸種が含まれます。一般的には彼岸花を除く花をリコリスと呼んでいるようです。
夏水仙や狐のカミソリでは花弁はラッパ型に開きますが、彼岸花では大きく反り返ってカールを描きます。