桔梗草

 桔梗草(キキョウソウ)は、北米原産の帰化植物で、今では東北以南の道端や草叢でよくみられます。よく似た植物として、鄙桔梗草(ヒナキキョウソウ)と鄙桔梗(ヒナキキョウ)があります。

桔梗を小さくしたような花がいくつも咲く桔梗草
 桔梗草、鄙桔梗草、鄙桔梗の特徴を上表に示します。いずれもキキョウ科の植物ですが、その下位分類は桔梗草と鄙桔梗草はキキョウ属、鄙桔梗はヒナギキョウ属と異なります。前2者は北アメリカ原産の帰化種、鄙桔梗は在来種です。
 桔梗草、鄙桔梗草、鄙桔梗はいずれもキキョウ科に属しますので、桔梗の花を小さくしたような美しい花を咲かせます。花弁は5枚、「おしべ」5本、「めしべ」は1本で柱頭は3裂します。桔梗草と鄙桔梗草の花はよく似ていて見分けることは困難です。鄙桔梗の柱頭は、ふわふわの羽毛のようになっています。
 花の全体像をみますと、違いがよく分かります。桔梗草と鄙桔梗草は、直立した茎に、桔梗草では複数の花を、鄙桔梗草では先端に1個の花を咲かせます。一方、鄙桔梗は「なよなよ」とした細い茎の先端に小さな花を1個咲かせますが、草丈も低く頼りなげに咲く姿は、他の2つとは明らかに異なります。
 桔梗をはじめキキョウ科の植物に共通する特徴で、「おしべ」と「めしべ」の成熟に時間差を設けて自家受粉を防ごうとする仕組みです。3種のいずれの花にもみられますが、桔梗草にて説明致します。
1)雄性期:先に5本の「おしべ」が成熟して花粉を放出します。この時「めしべ」の柱頭は開いておらず、こん棒のように突っ立っています。
2)雌性期:「おしべ」が退化した後、「めしべ」の柱頭が3裂し、虫の運んで来た他の花の花粉を受け入れます。
 桔梗草の葉は丸くて大きく、花や閉鎖花を載せる台座のようになって茎を抱きます。したがって桔梗草は、「だんだん桔梗草」とも呼ばれます。一方の鄙桔梗草の葉は細くて小さく、閉鎖花を包み込むようにして葉柄を介さず茎の一部に付着します。これを「茎を抱く」とするか、しないか、、判断の分かれるところですが、私は桔梗草と区別するためにも、敢えて「茎を抱かない」としました。
 それに比べ鄙桔梗の葉は、茎の基部に小さくて細いのが、申し訳程度に付いているぐらいです。茎の中央部の葉は、さらに小さくなります。
白く光るヒメコバンソウを背景に咲き揃う桔梗草
小さな群となって咲く鄙桔梗草
ひょろひょろと伸びた細い茎の先端に咲いた小さな花が、風に  
ゆらゆら揺れる姿は、水族館の人気者チンアナゴのようです。
細く長い茎の先端に青色の小さな花が咲く鄙桔梗、風にゆらゆら揺れる姿を見ていますと、妖怪の「ろくろ首」を思い出しました。
夏の青空の下、ぽつねんと一人、何を想っていることでしょうか。