通常私たちは満開の桜を、外から眺めます。青空の下、麗らかな春の陽を浴び、こんもりと薄桃色に咲き揃う満開の桜は、私たち日本人にとって春の原風景と言えるのではないでしょうか。私たちを癒してくれる桜のその姿は、外から、すなわち表から眺めたものです。
 一方、桜の幹の下まで足を運び、満開の枝を見上げますと、透光により明と暗が複雑に交錯して、影絵のような不思議な像になります。いわば満開の桜を裏から眺めるようなもので、美しい表の姿を愛でる本来の花見からすれば邪道かも知れませんが、今回敢えて山桜、染井吉野、江戸彼岸の桜の満開の枝を裏から眺め、その違いを比較しました。

近所の公園にそびえる大きな山桜の樹です。 ふっくらとした量感を漂わせて、今まさに満開です。これが山桜の表の顔です。
山桜では、花が咲く時に赤っぽい若葉も一緒に芽吹きます。裏から透かして見た時、赤っぽい若葉が美しい効果をもたらします。
満開の山桜の木の枝を、下から見上げて撮影した写真。黒くて太い枝が画面いっぱいに交差し、
桜の花たちは透けた陽の光により微妙に明暗変化します。所々に赤っぽい若葉が輝いています。
これが満開の山桜の裏の顔です。
これも満開の山桜の裏の顔で、光と影の交錯する桜の花々の所々に、朱い若葉が、透けた陽の光を受けて、飴色の宝石のように輝きます。
 
川沿いの染井吉野の並木です。春爛漫、見事に満開です。
満開の染井吉野では、若葉がないため色彩の変化はなく、うす桃色の単色で彩られます。
並木の下へ入り、見上げるようにして全体を撮影しました。満開の染井吉野の花は、単色のためか、薄桃色の濃淡で平面的に描かれ、何本もの太くて黒い幹にうまく調和します。
 
平面的な構図ながら奥行きを感じさせる、装飾的な日本画を観ているような気がします。
三重大学のキャンパス内に咲く江戸彼岸です。
江戸彼岸や染井吉野の花の構造は、山桜のように花序柄がなく、長い花柄を有することが特徴です。特に江戸彼岸では長く、光に透かしますと美しい細い線を描きます。
満開の江戸彼岸の枝を光に透かしますと、いろいろな形をした花と、細い枝や花柄の繊細な線が複雑に交錯して、美しい幾何学模様を描きます。まるで影絵のようです。