クサギ(臭木)

 クサギ(臭木)はシソ科クサギ属の落葉小高木で、日本全国どこにでも普通にみられるそうです。私がこの木を知ったのは昨年のことで、それまではまったく知りませんでした。今年の7月、覚えたばかりのクサギを探しながらあちこち自転車で走っていますと、雑木林の縁や道端の藪の中などに次から次へと現れます。長年入っている道ですから、去年までも有ったはずです。でもまったく気付きませんでした。今まで何を見ていたのだろう、私の眼の節穴に呆れてしまいました。

白い星のように咲くクサギの花。長く伸びた「おしべ」や「めしべ」が印象的です。

 クサギは葉に独特の匂いがするため、「臭い木」からクサギ(臭木)となったもので、気の毒な名前の付けられた植物の一つです。私もクサギの葉をちぎって匂いを嗅いでみましたが、確かにカメムシのような匂いがしますが、それほど強烈なものではありません。ネットでも匂いは気にならないと言う人も多く、逆にピーナッツのように香ばしいと感じる人もいるそうです。また若葉は茹でますと匂いが消えて、お浸しやあえ物などにして食べる地方もあります。さらに古くから葉や根は漢方薬としても用いられ、リウマチや高血圧などに効果があります。
クサギの葉

 さらに花の方は臭いどころか芳香がして虫や鳥を誘います。しかも秋になりますと藍色の果実が実り、染料として用いられるそうです。このように良いこと尽くめのクサギ、どうしてこのような気の毒な名前が付けられたのでしょうか、どうしても敬遠し勝ちになります。もっと良い名前が付けられていたら、さぞかし誰からも愛されたことでしょう。残念でなりません。

数本のクサギの木が集まって、いっせいに見事な満開です。

 花の構造ですが、「つぼみ」は5裂して細く長い5枚の裂片(花弁)に分かれ、白い星のように拡がります。「おしべ」は4本、「めしべ」は1本ですが、花冠(5枚の花弁の総称)に比べて異様に長いのが目立ちます。昔、漫画で見たことがあるような「口から火や水を噴く星」のようです。美しい花なのに何となくユーモラスに見えるのは、この不釣り合いに長い「おしべ」や「めしべ」のためと思われます。

 秋になりますと、萼は内部に藍色の果実を包みながら赤紫色から鮮やかな濃赤色となって5裂して拡がり、中央に青紫色の玉を置く赤い星のようになります。