なずな(ぺんぺん草)

 アブラナ科ナズナ属の野草「なずな」は、春先日本全国の野原や道端など、どこでもみられます。春の七草のひとつで、子供の頃、「せり、なずな、おぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ、これぞ七草!」と覚えました。食用にもなり、薬草としても古くから利用されて来ました。葉も美味しいのですが、根はさらに美味しく良い出汁も出るそうで、江戸時代初期までは野菜として畑で大切に栽培されていたそうです。昔の人たちにとっては冬場の貴重な野菜であり、感謝を込めて撫でたくなる「撫で菜」が転じて「なずな」になったとか、あるいは早春に咲いて夏には枯れて無くなるため「夏無き菜」が「夏無」「なずな」に変化したとも云われます。それほどまで生活には欠かせない大切な野菜であった「なずな」ですが、現在では畑から追い出され、畔や野原に蔓延る雑草として刈り取られてしまいます。時代の変遷とは云え、何とも気の毒な話です。

満開の白い「なずな」と根元を飾る桃色の「ほとけのざ」。遠くの野の色も春めいて来ました。
若い「なずな」。背景の樹の緑に鮮やかに映えます。
おぼろげな木立に、おぼろげに白く咲く「なずな」の花
白いお墓に、なぜかしらくっきり馴染みます。