モントブレチア

 モントブレチアは南アフリカ原産のアヤメ科の植物で、1880年フランスで交配により園芸種として改良され、明治時代に日本へ渡来しました。モントブレチアという名前は、フランスの植物学者、アーネスト・コケベール・ド・モンブレ(1780-1801年)の功績を讃えて名付けられたものです。モンブレは、若くしてエジプト遠征隊に参加し、モントブレチアをはじめアフリカの植物の研究に精魂を傾けましたが、ペストにより弱冠21歳で亡くなりました。 モントブレチアの和名は、ヒメヒオウギズイセン(姫檜扇水仙)と言います。日本古来の花ヒオウギに似て、それより一回り小さいので、こう呼ばれるようになりました。
 繁殖力はきわめて旺盛で、庭に植えますとどんどん増え、密集し過ぎた葉はしばしば折り重なるように倒れます。それでも平然と花は咲いています。最近では野生化し、草叢の中でたくましく育っているのをよく見かけます。
 「たくましさ」の目立つモントブレチアですが、たくさん咲く紅赤色の小さな花は、いずれも俯き加減です。しかもその紅赤色も鮮やかながら抑制が利いていて、何となく控え目な感じがします。

古い蔵の板壁を背景に咲くモントブレチア。鮮やかな紅赤色に、少し古風な美しさを感じます。
やや厚ぼったい紅赤色の花弁は6枚、基部が黄色くなっています。
3本の「おしべ」、柱頭の3裂した「めしべ」ともに黄色で、花弁の紅赤色と鮮やかなコントラストを呈します。
「つぼみ」が左右互い違いに開く無限花序 
俯き加減に咲くモントブレチア、何と案く淋しそうです。