悪なすび

 ワルナスビ(悪なすび)はナス科ナス属の多年草で、北米原産、欧州からアジア、オセアニアなど世界中に広く分布しています。日本には明治時代後半に伝わり帰化したそうです。呆れるほど繁殖力が旺盛で、広く深い根茎(地下茎)が栄養繁殖をしてどんどん増えます。刈っても刈っても、抜いても抜いてもお構いなく、次から次へと増えて行きます。またナス、トマト、ジャガイモなど同じナス科の畑に増殖しますと、連作障害により翌年これらの野菜は作れなくなります。全草にソラニンという毒が含まれているため家畜の餌にもならず、黄色いミニトマトのような果実はさらに毒性が強く食べられません。「ジャガイモの芽を食べるな」とよく言われますが、それはソラニンを含んでいるからです。おまけに葉や茎には鋭く大きな棘(とげ)が多数あり、うかつに触れられません。このように悪いこと尽くめの「悪なすび(ワルナスビ)」、名付け親は牧野富太郎博士です。しかし夏の盛りに田んぼの畔などに群がって咲く白い花は、なかなか愛らしく可憐な姿をしています。

やさしく可憐な花です。
夏の盛りを過ぎた頃、色付き始めた稲穂の大海原を背景に咲く悪なすび。
遠くの家並みや道路が柔らかさを増した夏の陽を受けてぼんやり光ります。
色付き始めた稲穂の黄緑とよく合います。
悪なすびの葉の裏面。主脈や茎には、鋭く大きな棘がたくさんあります。悪なすびの葉は、表も裏も触るとざらざらしますが、放射状に拡がった毛(星状毛)がびっしり生えているからです。
夏の昼下がり、陽の光に透ける悪なすびの花。何となく懐かしい光景です。
陽の傾きかけた頃、群れて咲く悪なすびの花。棘を持っているとは思えないほど、可憐に咲いています。
夕暮れ時、眠りに就く悪なすびの花。右上に鋭い棘が不気味に光ります。