継子の尻拭い(ママコノシリヌグイ)

 9月に入って残暑の中にも朝夕は秋の気配を感じるようになりますと、山道や野原で見かけるようになるのが、桃色の小さな花、ママコノシリヌグイ(継子の尻拭い)です。タデ科イヌタデ属の1年草で、北海道から九州、沖縄まで日本全国広く分布し、さらに朝鮮半島や中国、台湾でもみられます。美しい花なのに気の毒な名前の付けられた植物、前々回の臭木(クサギ)、前回の悪なすびに続いての登場です。全国でいろんな呼び名がありましたが、その中から牧野富太郎博士がこの名前を選び、標準和名にしたとのことです。

桃色の小さな花がかわいい継子の尻拭い。なぜこんな気の毒な名前になったのでしょうか?
 かわいい桃色の花の継子の尻拭い。遠目にも茎に小さな棘のあることが分かります。
道端にびっしり群れて咲く継子の尻拭い
「おしべ」は8本、「めしべ」は1本で柱頭は3裂します。
葉の形は三角形、葉柄の根元には茎を抱く円形の托葉があります。
継子の尻拭いでは、茎や葉柄、葉の裏の主脈や側脈などに、硬く鋭い棘がたくさん付いていて、指で触れますとトゲトゲしていて如何にも痛そうです。

 尾籠な話で恐縮ですが、用便後お尻を拭くのに、紙の無かった奈良や平安時代には籌木(ちゅうぎ)と呼ばれる木片を使っていたそうです。紙が使われるようになったのは、平安時代から鎌倉時代へ移行する頃といわれていますが、貴重な紙の代わりに蕗の葉や干し草なども使われたそうです。
憎たらしい継子のお尻をこの棘いっぱいの葉や茎で拭いてやれば、どれだけ痛がるだろうか・・・継母は一人想像しては、ほくそ笑んでいたのでしょうか。ほんとうとすれば恐ろしい話です。