日本の秋を美しく飾るのは「すすき」の白い穂です。私たちは、その変わりゆく様を眺めては、秋の訪れに気付き、深まりを感じ、爽やかさに心奪われ、去りゆく季節を惜しみます。津市の西郊外には安濃川という小さな川が流れていますが、その支流に沿って「すすき」の群が1km以上も連なる堤があり、それに並走する道を私はいつも自転車で走っています。季節の進むにつれ変わりゆく「すすきの穂」を眺めながら、秋風を受けて自転車で走るのは、実に気持ちの良いものです。「すすき」の情景に影響を与えるのは、風、陽の光、影、そして雲です。これらが互いに協力し合い、時にはぶつかり合って、絶妙の「すすき」の風情が生み出されます。
風や光と影、雲などに修飾され刻々変化する「すすき」の白い穂、その美しい姿を題材にした詩歌はないかと探していましたら、北原白秋の「風」という詩に出会いました。詩集「水墨集」(動き来るもの)に収められているものです。
真っ白なすすきの穂も、影になりますと黒い鳥の羽根のようになります。左の上下の写真は連続撮影によるものですが、上の写真の赤矢印で示した白いすすきの穂は、次の瞬間、真っ黒に変化しています(写真下)。こうしてすすきの穂は風に揺られ時々刻々白黒変化し、白い鳥と黒い鳥が入り混じったような異様な光景となります。